あなたは「作業療法士はやめとけ」という言葉を聞いたことはありませんか?結論、この言葉には確かな根拠があります。この記事を読むことで作業療法士のリアルな現実と対処法がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
1.作業療法士が「やめとけ」と言われる5つの理由
給料が低くて昇給が期待できない
作業療法士の平均年収は427~433万円で、全国平均の458万円を大きく下回っています。
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、作業療法士の月給は30.1万円、年間賞与は71.4万円となっており、年収に換算すると約433万円です。
これは国税庁調査による日本人の平均年収458万円と比較すると、25万円も低い水準となっています。
さらに深刻なのは昇給の問題です。
作業療法士の給与は診療報酬制度に基づいて決まるため、「リハビリ1回20分○○円」と報酬が固定されており、ベテランがリハビリしても新人がリハビリしても病院に入る収入は同じなのです。
そのため多くの職場では年間昇給額が2,000~3,000円程度に留まり、役職に就いても月1万円程度しか上がらないケースが珍しくありません。
サービス残業が多く労働環境が厳しい
作業療法士の業務時間外労働は常態化しており、多くの場合サービス残業となっています。
作業療法士の主な業務時間外作業は以下の通りです:
- カルテや計画書、サマリーの記載
- 会議・カンファレンスへの出席
- リハビリの勉強会への参加
- 実習生の指導
特に問題なのは、カルテ記入の時間がリハビリの時間に含まれないことです。
患者のリハビリは1単位20分で計算されますが、その後の記録作成時間は別途確保する必要があり、結果的に業務時間外の作業となってしまいます。
また「勉強会」と称した業務時間外の研修が事実上強制参加となっているケースも多く、休日返上で参加を求められることもあります。
厚生労働省の調査では作業療法士の平均残業時間は月5時間となっていますが、これは報告された数字であり、実際のサービス残業時間を含めるとさらに多くなると考えられます。
人間関係のストレスが大きい
作業療法士は多職種との連携が必須であり、人間関係の悩みが大きなストレス源となっています。
作業療法士が日常的に関わる相手は以下の通りです:
- 医師、看護師、理学療法士、言語聴覚士
- 患者やその家族
- 介護職員や事務職員
これだけ多くの人と関わるため、「できるだけ関わらない」という選択肢が取りにくく、苦手な人がいても業務上避けることができません。
実際によくある人間関係の悩みは以下のようなものです:
- リハビリに対する価値観を押し付けてくる先輩や同僚
- 適切な指導を行わない上司
- 患者や利用者とのコミュニケーション不全
- 職場内での悪口や陰口
特に新人の頃は、理不尽な立場に追いやられるケースも多く、中には1年も持たずに退職に追い込まれる人もいます。
キャリアアップの選択肢が限られている
作業療法士のキャリアパスは他の職種と比べて選択肢が少なく、将来的な不安を感じる人が多いです。
作業療法士の主なキャリアアップの道は以下に限られます:
- 主任や科長などの管理職
- 認定作業療法士や専門作業療法士の取得
- 教育・研究職への転身
- 自費リハビリでの独立
しかし管理職のポストは限られており、認定資格を取得しても大幅な給与アップにはつながりにくいのが現実です。
学会発表をしても給料に反映されないケースが多く、努力が報われにくいと感じる作業療法士も少なくありません。
また、成果報酬型ではないため、担当する患者数や業務に関する研究・発表をしても収入が大幅に上がることはほとんどありません。
身体的・精神的な負担が重い
作業療法士の仕事は肉体労働の側面もあり、年齢を重ねるごとに身体的負担が増大します。
身体的な負担の具体例:
- 移乗介助による腰痛のリスク
- 長時間の立ち仕事による足腰への負担
- 患者の介助による怪我のリスク
精神的な負担も深刻で、患者の回復過程に深く関与するため大きなプレッシャーがかかります。
特に以下のような状況で精神的ストレスが蓄積されます:
- 患者の状態が思わしくない場合
- 治療が効果を上げない場合
- 先輩や上司からのプレッシャー
- 一日の単位ノルマによるプレッシャー
「利用者さんのため、患者さんのため」と口癖のように言われ続ける職場環境では、精神的な疲労が蓄積し、やりがいを感じられなくなってしまうケースも多いのです。
2.作業療法士の年収と労働条件の現実
平均年収は427~433万円と全国平均以下
作業療法士の年収は他の医療職と比較しても決して高くありません。
厚生労働省の最新データ(令和5年賃金構造基本統計調査)による作業療法士の収入内訳:
- 平均月給:30.1万円
- 平均年間賞与:71.4万円
- 平均年収:約433万円
これを他の医療職と比較すると以下の通りです:
- 看護師:平均月給35.2万円(年収約493万円)
- 介護職員:平均月給26.4万円(年収約347万円)
- 作業療法士:平均月給30.1万円(年収約433万円)
作業療法士の年収は看護師と介護職員の中間に位置していますが、国家資格を要する専門職としては物足りない水準と言えるでしょう。
年齢別の年収推移を見ると、20代前半で約341万円からスタートし、50代後半の589万円でピークを迎えますが、その後は下降傾向となります。
地域や職場規模による年収格差の実態
作業療法士の年収は勤務地域や職場規模によって大きく異なります。
都道府県別の年収格差は最大で100万円以上に及びます:
- 最高額:滋賀県473万円
- 東京都:約450万円
- 大阪府:約440万円
- 最低額:地方県では370万円台
企業規模別の年収データ(厚生労働省調査):
- 1,000人以上の事業所:約421万円
- 100~999人の事業所:約405万円
- 10~99人の事業所:約398万円
意外なことに、事業所規模が小さいほど平均月収が高くなる傾向があります。
ただし1,000人以上の事業所では賞与の支給額が多く、年収で見ると最も高い傾向にあります。
職場別の月収・年収データでは以下のような差があります:
- 訪問看護ステーション:最も高収入
- 訪問リハビリテーション:2位
- 一般病院:最下位(訪問看護との差は月収で約4.7万円)
昇給システムの問題点と限界
作業療法士の昇給システムには構造的な問題があり、大幅な収入アップは期待できません。
昇給の問題点:
- 年間昇給額:多くの職場で2,000~5,000円程度
- 役職手当:主任クラスでも月1万円程度
- 成果報酬なし:努力が給与に反映されにくい
この背景には診療報酬制度があります。
医療機関の収入は「リハビリ1回20分○○円」という形で国によって決められており、経験やスキルによる差別化ができないのです。
そのため、以下のような努力をしても給与には反映されません:
- 学会発表や研究活動
- 資格取得(認定作業療法士など)
- 患者満足度の向上
- 業務効率の改善
昇給を期待するなら転職を検討するしかないのが現実です。
年間休日数と残業時間の現状
作業療法士の休日は一般的なサラリーマンと比べて少ない傾向にあります。
年間休日数の実態:
- 平均年間休日数:110日前後(週休2日・4週8休)
- 年間休日120日以上の施設:少数
- 土日祝休みの施設:さらに少数
特に急性期や回復期の治療として365日リハビリを実施する施設では、休みが少なくなる傾向があります。
残業時間については公式データと実態に乖離があります:
- 厚生労働省調査:月平均5時間
- 全給与所得者平均:月10時間
- 実際のサービス残業を含む:さらに多い可能性
残業が発生する主な理由:
- カルテや計画書の記載(リハビリ時間に含まれない)
- 会議・カンファレンス
- 勉強会への参加
- 実習生指導
これらの業務に対して適切な報酬が支払われないケースが多いのが問題となっています。
3.実際に辞めた人の転職先と理由
一般企業への転職パターン(営業・事務・医療機器メーカー)
作業療法士から一般企業への転職は十分可能で、特に営業職や事務職での成功例が多く見られます。
実際の転職成功事例:
営業職への転職
- 医療機器メーカーの営業:年収550万円(18年目OT相当)
- 福祉用具レンタル・販売:作業療法士の知識を活用
- 生命保険営業:病気の知識とコミュニケーション能力を活用
事務職への転職
- 一般企業の総務・人事
- 医療関連企業の事務職
- IT企業のカスタマーサポート
医療機器・福祉用品メーカー
- 福祉用具のレンタル・販売営業
- 利用者への適切な用具選定・相談業務
- 納品・アフターフォロー
転職のメリット:
- 年収アップの可能性(一般企業では同年齢で600万円も可能)
- 定時退社でプライベート確保
- 営業職では成果に応じた報酬
一方で課題もあります:
- 作業療法士の資格が活用できない場合がある
- 営業ノルマやプレッシャー
- 顧客開拓の努力が必要
完全異業種への転職事例
作業療法士の経験を活かして、まったく異なる業界で活躍している人も存在します。
実際の転職事例:
編集・出版業界
- 医療・介護系の専門書編集者
- フリーランス編集者として独立
- 作業療法士の専門知識を活用した書籍制作
政治・行政分野
- 国会議員・市区町村議員
- 行政機関での福祉政策企画立案
- 障害者雇用関連の業務
教育・メディア分野
- YouTube配信者として専門知識を発信
- 専門学校の講師
- 医療ライターとして活動
その他の分野
- 青年海外協力隊として海外で活動
- 結婚相談所の運営
- 家族の事業(飲食店・会社経営)継承
これらの転職では、作業療法士として培った対人援助スキルや専門知識が新しい分野で活かされています。
転職後の年収変化と満足度
転職後の年収は職種によって大きく異なり、成功例と失敗例の両方が存在します。
年収アップ成功例:
- 一般企業営業職:430万円→550万円(コロナ前)
- 医療機器メーカー:作業療法士時代より100万円以上アップ
- IT企業:600万円以上の年収獲得
年収ダウン例:
- 営業職:毎日夜10時まで働いて手取り17万円
- 異業種転職後:300万円台の年収
- フリーランス:収入不安定
満足度に関する実態:
- 転職成功者:1/100人程度という厳しい現実
- 多くの人が元の待遇より低い条件で働くことになる
- 営業ノルマや長時間労働で疲弊するケースも
転職時の注意点:
- 異業種でのスキル不足を補う努力が必要
- 営業努力なしに顧客が来る病院環境との大きなギャップ
- 経済情勢や業界の将来性を十分に検討する必要
作業療法士に戻る人の実情
一度異業種に転職した後、再び作業療法士に戻る人が意外に多いのが実情です。
戻る理由として以下が挙げられます:
仕事内容の問題
- イメージと実際の業務内容の違い
- 顧客開拓の努力が想像以上に大変
- 努力と成果が必ずしも比例しない現実
労働環境の問題
- 長時間労働(夜10時まで働くケースも)
- 厳しいノルマやプレッシャー
- 人間関係の複雑さ
スキル・適性の問題
- 営業スキルの不足
- コミュニケーション能力の限界
- 「仕事の闇」を見てしまった
実際の戻り組の声:
「作業療法士に戻りたいなと思っており、いつか必ず戻ろうと思っております」(営業職2年半経験者)
「やり直しはききますので、自分で決めたら向かってみてください」
ただし、戻る際の条件が以前より悪くなるケースもあり、慎重な検討が必要です。
一方で、異業種経験により視野が広がり、「営業職をしていた方の気持ちが分かる」といったメリットを感じる人もいます。
4.作業療法士を続けるメリットと対処法
やりがいと社会的意義を再認識する
作業療法士の仕事には確かな社会的意義があり、他の職種では得られない特別なやりがいが存在します。
作業療法士ならではのやりがい:
患者の回復を直接目の当たりにできる
- 重度の病気やケガから少しずつ回復していく患者の変化
- 「ありがとう」という感謝の言葉を直接もらえる機会
- 社会復帰を成功させた時の達成感
専門性を活かした支援ができる
- 手指機能や上肢機能の回復支援
- 日常生活動作の改善
- 精神的なサポートも含めた包括的なケア
継続的な学びと成長
- 医療技術の進歩とともに新しい知識を習得
- 学びながらお金がもらえる環境
- 患者一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療
安定した就職環境
- 作業療法士全体の87.8%が継続して職務に従事
- 高齢化社会でますます需要が高まる職種
- 全国どこでも働ける資格の強み
実際に10年以上働く作業療法士の声:
「私は作業療法士として10年勤めてきましたが、後悔はありません。その間にたくさんの学びがあったからです。」
転職で労働環境を改善する方法
同じ作業療法士でも職場を変えることで労働環境を大幅に改善できる可能性があります。
労働環境改善のための転職戦略:
高収入を狙える職場
- 訪問看護ステーション:最も給与水準が高い
- 訪問リハビリテーション:在宅需要の高まりで好条件
- 大規模病院:賞与額が多い傾向
ワークライフバランス重視の職場
- 土日祝休みの訪問リハ・デイサービス
- 年間休日120日以上の施設
- 残業が少ない職場
転職時の情報収集ポイント
- 従業員数・職員数
- 平均残業時間・残業代の支給状況
- 資格手当の有無と金額
- 離職率
- 昇給システム
転職エージェントの活用
- マイナビコメディカル:非公開求人40%
- PTOTSTワーカー:各職種専門アドバイザー
- PTOT人材バンク:医療・介護業界特化
転職成功のコツ:
- 複数の転職エージェントに同時登録
- 内部情報を事前にしっかり収集
- 給与だけでなく労働環境も総合的に判断
資格取得によるキャリアアップ戦略
追加資格の取得により、作業療法士としての専門性を高め、キャリアアップを図ることができます。
取得すべき関連資格:
作業療法士協会認定資格
- 認定作業療法士:一定水準以上の能力を認定
- 専門作業療法士:特定分野の高度な専門能力
- 認定訪問療法士:在宅リハビリの専門性
他分野の専門資格
- 呼吸療法認定士:呼吸器リハビリの専門家
- 社会保険労務士:人事・労務分野への展開
- ケアマネジャー:介護分野でのキャリア拡大
資格取得のメリット
- 資格手当:月5,000円~10,000円程度
- 転職時の差別化要因
- より専門性の高い業務への従事機会
- 独立開業の可能性拡大
実際の成功例:
「社会保険労務士試験を受けて合格し、来年に独立開業しようと思って準備しております」(30代前半OT)
ダブルライセンス戦略
- 作業療法士×社労士:医療従事者向けの労務相談
- 作業療法士×ケアマネ:包括的な介護サービス提供
- 作業療法士×福祉住環境コーディネーター:住環境改修提案
副業や独立という選択肢
作業療法士の資格と経験を活かして副業や独立を行うことで、収入アップとキャリアの多様化が可能です。
副業の選択肢:
フリーランス作業療法士
- 複数の医療・介護事業所を掛け持ち
- 時給3,000円以上の高単価案件も存在
- 自分のペースで働ける自由度
教育・研修分野
- 専門学校での非常勤講師
- 企業向け健康管理研修
- 介護職員向けリハビリ研修
情報発信・コンテンツ作成
- 医療ライターとして記事執筆
- YouTube等での専門知識発信
- オンライン相談サービス
コンサルティング業務
- 福祉用具選定アドバイザー
- 住環境改修コンサルタント
- 介護施設の運営改善支援
独立開業の可能性:
自費リハビリサービス
- 保険適用外のリハビリサービス提供
- より柔軟で個別性の高いサービス
- 高単価での業務が可能
複合的なサービス展開
- リハビリ×住環境改修
- リハビリ×健康増進プログラム
- リハビリ×介護予防サービス
独立成功のポイント:
- マーケティング・営業スキルの習得
- 地域のニーズ調査と差別化戦略
- 継続的な顧客獲得の仕組み作り
- 適切な価格設定とサービス品質の確保
注意点:
- 開業資金と運転資金の確保
- 集客活動の必要性
- 経営スキルの習得
- リスク管理の重要性
まとめ
作業療法士が「やめとけ」と言われる理由と現実について解説してきました。重要なポイントをまとめると以下の通りです:
- 作業療法士の平均年収433万円は全国平均を下回り、昇給も期待できない現実がある
- サービス残業の常態化と人間関係のストレスが大きな負担となっている
- キャリアアップの選択肢が限られており、将来的な不安を感じる人が多い
- 異業種転職は可能だが成功率は低く、多くの人が元の条件より悪化している
- 転職により労働環境を改善できる可能性があり、職場選びが重要
- 資格取得や副業により収入アップとキャリア拡大が図れる
- 患者の回復を支援する社会的意義とやりがいは他の職種では得られない価値
- 高齢化社会の進展により今後も安定した需要が見込める職種である
- 情報収集を十分に行い、自分の価値観と照らし合わせて判断することが大切
- 作業療法士としてのスキルは他分野でも活用できる汎用性がある
作業療法士の道は確かに厳しい面もありますが、適切な対策を講じることで充実したキャリアを築くことは十分可能です。まずは現在の状況を客観的に分析し、自分にとって最適な選択肢を見つけてください。あなたの判断が、より良い将来につながることを心から願っています。