調理師免許の取得を目指しているあなた、「実務経験をごまかして取得できないか」と考えていませんか?結論、実務経験のごまかしは犯罪行為で、懲役や罰金の対象となります。この記事を読むことで、ごまかしの重大なリスクと正しい取得方法がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.調理師免許の実務経験をごまかすリスクとは

実務経験のごまかしは犯罪行為になる
調理師免許の実務経験をごまかすことは、単なる不正ではなく明確な犯罪行為です。
刑法157条2項では「公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者」について罰則が定められています。
実務経験証明書に虚偽の内容を記載してもらい、それを提出して調理師試験を受験する行為は、この法律に抵触します。
「ばれなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。
調理の現場で働く以上、いつ誰がその経歴を疑問視するかわかりません。
刑法違反で懲役や罰金の対象となる可能性
刑法157条2項に違反した場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処される可能性があります。
これは決して軽い罪ではありません。
虚偽の申請をした本人だけでなく、虚偽の証明書を作成した勤務先の責任者にも影響が及ぶ可能性があります。
実際の判例では、資格取得のために実務経験を偽装したケースで刑事罰が科された事例も報告されています。
軽い気持ちで始めた不正が、人生を大きく狂わせることになるのです。
発覚後は調理師免許が剥奪される
仮に実務経験をごまかして調理師免許を取得できたとしても、後から発覚した場合は免許が剥奪されます。
調理師法の定めにより、罰金以上の刑を科されると調理師免許を取得できません。
すでに取得した免許であっても、ごまかしが発覚して罰金以上の刑が確定した場合、免許は取り消されます。
それまで調理師として積み上げてきたキャリアが一瞬で失われるだけでなく、前科がつくことで今後の人生にも大きな影響を与えます。
就職や転職でも信用を失うリスク
実務経験のごまかしが発覚すれば、業界内での信用を完全に失います。
飲食業界は意外と狭い世界で、不正行為の噂はすぐに広まります。
調理師免許を剥奪されただけでなく、「不正をした人物」というレッテルが貼られ、今後の就職や転職が極めて困難になります。
たとえ料理の腕があったとしても、信用のない人物を雇用したいと考える経営者はいません。
目先の資格取得よりも、長期的なキャリア形成を考えるべきです。
2.調理師免許取得に必要な実務経験の正しい条件

実務経験は2年以上が必須要件
調理師免許の受験資格を得るには、2年以上の実務経験が必要です。
この2年間は、調理業務に継続して従事していることが条件となります。
「2年間」とは24ヶ月以上を意味し、1ヶ月以上の長期休暇がある場合はその期間を除いて計算します。
実務経験は過去のものでも問題なく、現在調理業務に就いていなくても、過去に条件を満たしていれば受験資格があります。
ただし、当時の施設長や法人代表者からの証明が必要です。
週4日以上かつ1日6時間以上の勤務条件
実務経験として認められるには、週4日以上かつ1日6時間以上の勤務が必要です。
両方の条件を満たしていなければ、いくら長期間働いていても実務経験とは認められません。
例えば、週5日働いていても1日5時間勤務であれば対象外です。
逆に、1日8時間働いていても週3日勤務では不十分です。
シフト制の職場で働く場合は、この条件を満たせるよう勤務シフトを調整する必要があります。
複数の職場での経験は合算できる
異なる期間に複数の職場で働いた場合、その期間を合算して2年以上になれば受験資格を得られます。
例えば、A店で1年、B店で1年働いた場合、合計2年として申請可能です。
さらに細かく分かれていても問題なく、半年×4ヶ所でも合算できます。
ただし、同時期に複数の職場を掛け持ちしていた場合は合算できません。
2024年1月から2025年1月まで昼はA店、夜はB店で働いていた場合、どちらか一方の1年分しか計算できないのです。
アルバイトやパートでも実務経験として認められる
実務経験は雇用形態を問わず認められます。
正社員である必要はなく、アルバイトやパートタイムでも、週4日以上かつ1日6時間以上の条件を満たせば実務経験となります。
学生時代のアルバイト経験も条件次第で認められます(ただし在学中は一部制限があります)。
現在、飲食店でアルバイトをしながら調理師免許の取得を目指すことは十分可能です。
むしろ、働きながら試験勉強ができるため、効率的な資格取得方法といえます。
実務経験として認められる施設と業種
実務経験として認められる施設は、調理師法施行規則第4条で定められています。
認められる主な施設は以下の通りです。
- 飲食店営業(食堂、レストラン、居酒屋、寿司屋など)
- 旅館や簡易宿泊所
- 給食施設(学校、病院、寮など、1回20食以上または1日50食以上を継続提供)
- 惣菜製造業(スーパーや惣菜店での惣菜製造)
- 魚介類販売業(魚の内臓除去や三枚おろしなど調理業務)
これらの施設で調理業務に従事していることが重要です。
同じ飲食店でも、ホール業務や配膳のみでは実務経験になりません。
3.実務経験として認められない業務や施設

接客や配達など調理以外の業務
飲食店で働いていても、調理業務以外は実務経験として認められません。
認められない業務には以下のようなものがあります。
- ホール業務(接客、配膳、レジ対応)
- 配達業務(デリバリースタッフ)
- 洗い場業務(食器洗浄のみ)
- 清掃業務
たとえ厨房内で働いていても、食材の運搬や片付けだけでは不十分です。
実際に包丁を持って食材を切る、調理器具を使って加熱調理するなど、調理そのものに従事している必要があります。
喫茶店営業許可のみの店舗での勤務
喫茶店やカフェでの勤務は注意が必要です。
喫茶店営業許可のみを取得している店舗での業務は、原則として実務経験に認められません。
喫茶店営業では、酒類以外の飲み物や茶菓を提供することが認められていますが、本格的な調理は想定されていないためです。
一方、飲食店営業許可を取得しているカフェであれば実務経験として認められます。
自分が働いている(または働こうとしている)店舗がどちらの許可を取得しているか、事前に確認することが重要です。
食品衛生法の営業許可を受けていない施設
食品衛生法に基づく営業許可を受けていない施設での調理経験は実務経験になりません。
例えば、以下のような場合は対象外です。
- 友人の自宅で料理教室を開催
- 無許可の移動販売車での調理
- 許可を得ていないシェアキッチンでの活動
どんなに高度な調理スキルを持っていても、法的に認められた施設でなければ実務経験とはみなされません。
必ず保健所の許可を受けた施設で働く必要があります。
在学中のアルバイト経験は対象外
高校や大学などの在学中に行ったアルバイトは、原則として実務経験に認められません。
調理師試験の受験資格には「中学校卒業以上」という学歴要件があり、在学中の経験は除外されるのが基本です。
ただし、卒業後に同じ職場で継続して働いた場合、卒業後の期間は実務経験としてカウントできます。
高校生のうちに飲食店でアルバイトを始め、卒業後も継続して2年以上働けば受験資格を得られます。
在学中の経験を無駄にしないためにも、卒業後の継続勤務を検討すると良いでしょう。
同時期の複数施設での掛け持ち勤務
同じ期間に複数の施設で掛け持ちして働いていた場合、勤務期間を重複して計算することはできません。
例えば、2年間ずっと昼はA店、夜はB店で働いていた場合、どちらか一方の2年分しか実務経験として認められません。
両方合わせて4年分にはならないのです。
一方、異なる時期に別々の職場で働いた場合は合算できます。
2022年〜2023年はA店、2023年〜2024年はB店というように時期が重なっていなければ、両方の期間を足して実務経験とできます。
4.実務経験証明書の正しい取得方法

調理業務従事証明書の申請手順
調理師試験を受験するには、調理業務従事証明書の提出が必須です。
この証明書は調理師試験の願書に同封されており、以下の手順で取得します。
1. 願書を入手する
各都道府県の保健所や調理技術技能センターのウェブサイトから願書を取り寄せます。
2. 調理業務従事証明書に必要事項を記入
自分の情報(氏名、生年月日など)と勤務先情報を記入します。
3. 勤務先の責任者に証明を依頼
施設長や代表者に証明書への記入と押印を依頼します。
4. 願書と一緒に提出
記入済みの証明書を他の必要書類とともに提出します。
勤務先の施設長や代表者から証明をもらう
証明書には、勤務先施設の長または法人代表者の記入と実印が必要です。
個人経営の飲食店なら店主、チェーン店なら店長や本社の代表者が該当します。
証明してもらう内容は主に以下の通りです。
- 勤務期間(開始日と終了日)
- 勤務形態(週何日、1日何時間)
- 従事した業務内容(調理業務であることの証明)
- 施設の名称と所在地
- 施設の営業許可番号
退職した職場の証明が必要な場合でも、当時の施設長に連絡を取り、証明書への記入を依頼しましょう。
二親等以内の血縁者からの証明は不可
受験者本人と二親等以内の血縁関係にある人物は、証明書に記入することができません。
二親等以内とは、以下の関係を指します。
- 親、子供(一親等)
- 祖父母、孫、兄弟姉妹(二親等)
つまり、親や家族が経営している店舗での実務経験は、原則として認められないのです。
客観性と公正性を保つための規定ですので、この場合は他の施設で実務経験を積む必要があります。
ただし、家族経営でも第三者の証明があれば認められるケースもありますので、詳しくは後述します。
廃業した店舗の場合の第三者証明
過去に勤務していた店舗がすでに廃業している場合や、施設長が二親等以内の血縁者である場合は、第三者による証明が必要です。
第三者として認められるのは以下の人物です。
- 同業種の他の施設長
- 調理師協会の代表者
- 飲食店組合などの所属団体の長
これらの人物に、当時の勤務状況を証明してもらう必要があります。
もし証明できる第三者が全くいない場合は、残念ながら改めて実務経験を積み直す必要があります。
廃業のリスクを考えると、できるだけ在職中に証明書を準備しておくことが賢明です。
複数職場の証明書を施設ごとに用意する
複数の職場での経験を合算する場合、施設ごとに調理業務従事証明書を用意する必要があります。
例えば、3つの飲食店で働いた経験を合算するなら、3枚の証明書が必要です。
証明書の用紙はコピーしたものでも使用可能ですので、必要枚数分を準備しましょう。
それぞれの施設の代表者に記入と押印を依頼する必要があるため、時間に余裕を持って準備することが大切です。
転職や退職の際には、その都度証明書を書いてもらっておくと、後々スムーズに申請できます。
5.実務経験が足りない場合の正しい対処法

調理師養成施設へ進学する選択肢
実務経験が足りない、またはこれから調理師を目指す場合、調理師養成施設への進学が最も確実な方法です。
各都道府県知事が指定する調理師養成施設(専門学校、短大、大学など)を卒業すれば、試験を受けずに調理師免許を取得できます。
養成施設では最短1年で卒業できるコースもあり、実務経験2年よりも短期間で資格取得が可能です。
メリットは以下の通りです。
- 調理技術を体系的に学べる
- 栄養学や衛生管理など幅広い知識を習得できる
- 一流料理人から直接指導を受けられる
- 同じ目標を持つ仲間とのネットワークができる
- 卒業と同時に確実に資格取得できる
学費はかかりますが、確実性と学習環境を考えると非常に有効な選択肢です。
実務経験を積める職場を探して働く
現在調理業務に就いていない場合、実務経験として認められる職場で働き始めることが必要です。
求人を探す際は、以下の点を確認しましょう。
確認すべきポイント
- 週4日以上、1日6時間以上のシフトが可能か
- 調理業務に従事できるか(ホールのみではないか)
- 飲食店営業許可を取得しているか
- 調理師免許取得を目指す従業員をサポートしてくれるか
おすすめの職場
- 給食施設(学校、病院、老人ホームなど):シフトが安定している
- チェーン店の厨房:研修制度が整っている
- ホテルや旅館のレストラン:本格的な調理技術を学べる
飲食業界に特化した求人サイトや転職エージェントを活用すると、条件に合った職場を見つけやすくなります。
実務経験の計算方法を再確認する
実務経験が足りないと思っている場合でも、計算方法を誤っている可能性があります。
以下の点を再確認してみましょう。
チェックポイント
- 過去の職場の経験を見落としていないか
- 複数の職場の期間を正しく合算しているか
- 週4日以上、1日6時間以上の条件を満たす期間を正確にカウントしているか
- 長期休暇(1ヶ月以上)を除いて計算しているか
実務経験の計算は複雑に感じるかもしれませんが、正確に計算すれば意外と条件を満たしているケースもあります。
不安な場合は、各都道府県の保健所や調理技術技能センターに問い合わせることをおすすめします。
認められる業種での勤務時間を増やす
現在、実務経験として認められる職場で働いているものの、勤務時間や日数が不足している場合は、シフトの調整を検討しましょう。
例えば、現在週3日勤務なら週4日に増やす、1日5時間勤務なら6時間に延長するといった対応です。
雇用主に調理師免許取得を目指していることを伝えれば、協力してくれるケースが多いです。
また、正社員への転換も選択肢の一つです。
正社員であれば勤務時間の条件を満たしやすく、安定して実務経験を積むことができます。
職場選びの段階で「調理師免許取得を支援してくれる環境か」を確認することも大切です。
まとめ
この記事でわかったポイントをまとめます。
- 調理師免許の実務経験をごまかすことは刑法違反で、1年以下の懲役または20万円以下の罰金の対象となる犯罪行為である
- 実務経験の虚偽申請が発覚すると、調理師免許が剥奪され、業界内での信用も完全に失う
- 正しい実務経験の条件は、週4日以上かつ1日6時間以上の勤務を2年以上継続することである
- アルバイトやパートでも条件を満たせば実務経験として認められ、複数の職場の期間を合算できる
- 接客業務や在学中のアルバイト、同時期の掛け持ち勤務は実務経験として認められない
- 調理業務従事証明書は勤務先の施設長や代表者から取得する必要があり、二親等以内の血縁者からの証明は不可
- 実務経験が足りない場合は、調理師養成施設への進学や認められる職場での勤務時間増加で対応できる
調理師免許は一生使える国家資格です。不正な方法で取得しても必ず後悔することになります。正しい方法で堂々と資格を取得し、プロの調理師としてのキャリアを築いていきましょう。あなたの努力は必ず報われます。頑張ってください!
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