「賞与をもらえたのは自分だけじゃない」「なぜ特定の人だけに賞与が支給されるのか」と疑問に感じたことはありませんか?結論、賞与を特定の人だけに支給すること自体は違法ではありませんが、その理由や方法によっては違法となる可能性があります。この記事を読むことで、賞与支給の法的基準や対処法がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1. 賞与を特定の人だけに支給することは違法なのか


賞与支給の法的位置づけと基本原則
賞与は法律上の義務ではなく、会社が任意で支給する報酬です。
労働基準法では賃金の支払いについて厳格な規定がありますが、賞与については「必ず支給しなければならない」という義務は定められていません。
つまり、賞与を支給するかどうか、誰に支給するかは、基本的には会社の裁量に委ねられています。
ただし、就業規則や雇用契約書に「賞与を支給する」と明記されている場合は話が変わってきます。
この場合、賞与は労働条件の一部となり、会社は約束した賞与を支給する義務を負うことになります。
労働基準法における賞与の扱い
労働基準法第11条では、賃金を「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義しています。
賞与も賃金の一部として扱われるため、一定の法的保護を受けます。
特に重要なのが、労働基準法第3条の「均等待遇の原則」です。
この条文では、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と規定されています。
つまり、性別や国籍、思想信条などを理由に賞与支給で差別することは明確に違法となります。
違法となるケースと適法なケースの違い
賞与支給が違法となるか適法となるかは、支給基準の合理性と透明性によって判断されます。
違法となる主なケースは以下の通りです。
- 性別、国籍、思想信条などによる差別的な不支給
- 就業規則や賞与規定に違反した恣意的な支給
- 労働組合活動を理由とした不利益取扱い
- パワハラやセクハラの報復としての不支給
一方、適法となるケースは以下のようなものです。
- 明確な評価基準に基づく成果・能力による差異
- 雇用形態(正社員・契約社員など)による区別
- 職種や役職による支給基準の違い
- 勤務期間や勤務実績に応じた支給
重要なのは、支給基準が事前に明示され、客観的で合理的な理由に基づいていることです。
2. 賞与支給で不公平とみなされる具体的なケース


差別的な理由による不支給の問題
法律で禁止されている差別的理由による賞与の不支給は明確に違法です。
具体的には以下のようなケースが該当します。
- 女性従業員だけ賞与を減額または不支給にする
- 外国籍の従業員に賞与を支給しない
- 特定の宗教や政治的信条を持つ従業員を賞与支給から除外する
- 妊娠・出産を理由に賞与を減額する
- 育児休業取得を理由に賞与を不支給にする
これらは男女雇用機会均等法や労働基準法に違反する行為であり、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
また、労働組合に加入していることや労働組合活動を行ったことを理由に賞与を不支給にすることも、不当労働行為として労働組合法で禁止されています。
就業規則や賞与規定に違反する支給
就業規則や賞与規定に「賞与を支給する」と明記されている場合、その規定に従わない支給は違法となります。
例えば、就業規則に「年2回、夏季と冬季に賞与を支給する」と記載されているにもかかわらず、特定の従業員だけ支給しないケースです。
また、賞与規定に「基本給の○ヶ月分を支給する」と明記されているのに、合理的な理由なく一部の従業員だけ減額するケースも問題となります。
就業規則は労働契約の内容を構成するため、会社はこれを遵守する義務があります。
規定に違反した賞与の不支給や減額は、債務不履行や労働契約違反として法的責任を問われる可能性があります。
合理的な理由がない恣意的な支給
経営者や上司の個人的な好き嫌いで賞与支給を決めることは、恣意的な取扱いとして問題視されます。
具体的には以下のようなケースです。
- 上司に気に入られている従業員だけ高額の賞与を支給する
- 社長の親族や友人だけに特別に賞与を支給する
- 特定の部署だけ合理的理由なく賞与を不支給にする
- 同じ成果を上げているのに特定の人だけ賞与が少ない
これらは客観的・合理的な基準に基づかない支給であり、公序良俗に反するとして無効とされる可能性があります。
また、職場の信頼関係を損ない、従業員のモチベーション低下や離職につながるリスクもあります。
過去の判例から見る違法事例
過去の裁判例では、賞与支給をめぐって様々な判断が示されています。
【違法と判断された事例】
- 女性従業員というだけで賞与を男性の半額にした事例(性差別として違法)
- 労働組合員だけ賞与を減額した事例(不当労働行為として違法)
- 育児休業中の従業員の賞与を全額カットした事例(不利益取扱いとして違法)
【適法と判断された事例】
- 明確な人事評価制度に基づき、成績優秀者に高額賞与を支給した事例
- 正社員と契約社員で賞与額に差を設けた事例(雇用形態の違いとして合理的)
- 勤続年数に応じて賞与額を変動させた事例
これらの判例から、客観的で合理的な基準があるかが重要な判断ポイントとなることがわかります。
3. 適法に賞与を特定の人だけに支給するための条件


明確な賞与規定の整備が必須
特定の人だけに賞与を支給する、または支給額に差をつける場合、就業規則に明確な賞与規定を定めることが不可欠です。
賞与規定には以下の項目を明記する必要があります。
- 賞与の支給時期(年○回、○月と○月など)
- 支給対象者の範囲(正社員のみ、全従業員など)
- 支給額の算定基準(基本給の○ヶ月分、業績連動型など)
- 支給日の在籍要件(支給日に在籍していること、など)
- 評価基準と評価方法
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
賞与に関する規定も就業規則に記載し、全従業員に周知することが重要です。
客観的で合理的な支給基準の設定方法
賞与支給で差をつける場合、誰が見ても納得できる客観的な基準を設定することが重要です。
効果的な支給基準の設定方法を以下に示します。
| 基準の種類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 人事評価 | 目標達成度、能力評価、行動評価 | 評価項目と配点を明確化 |
| 勤務実績 | 出勤率、残業時間、勤続年数 | 数値で測定可能な項目を選定 |
| 業績貢献 | 売上実績、新規顧客獲得数 | 職種によって基準を変える |
| 役職・等級 | 管理職、一般職、等級制度 | 昇格基準も明確にする |
評価基準は数値化・可視化することで透明性が高まります。
また、評価プロセスも重要で、自己評価と上司評価を組み合わせるなど、複数の視点から評価する仕組みを作ることが望ましいです。
成果・能力・貢献度による差異の付け方
成果主義に基づく賞与の差異は、適切に運用すれば適法とされています。
効果的な差異の付け方のポイントは以下の通りです。
まず、明確な目標設定が重要です。
期初に各従業員と面談を行い、具体的な目標(KPI)を設定します。
目標は「売上○○円達成」「顧客満足度○点以上」など、定量的に測定できるものが理想的です。
次に、定期的な評価とフィードバックを実施します。
半期ごとや四半期ごとに進捗確認を行い、目標達成に向けた改善点を指導します。
この過程を記録しておくことで、賞与査定時の根拠となります。
最後に、評価結果と賞与額の連動を明示します。
例えば、S評価は基本給の3ヶ月分、A評価は2ヶ月分、B評価は1ヶ月分など、評価と賞与額の対応関係を事前に示しておくことが重要です。
雇用形態や職種による区別の考え方
正社員と非正規社員で賞与支給に差を設けることは、原則として適法です。
ただし、2020年4月に施行された同一労働同一賃金の原則(パートタイム・有期雇用労働法)により、不合理な待遇差は禁止されています。
適法とされる区別の例は以下の通りです。
- 正社員は業績連動型賞与、契約社員は固定額の賞与
- 正社員のみ賞与支給対象とし、パート・アルバイトには別途寸志を支給
- 営業職には成果給的な賞与、事務職には勤務実績に応じた賞与
一方、同じ仕事内容・責任でありながら雇用形態だけを理由に賞与を不支給にすることは、不合理な待遇差として違法となる可能性があります。
雇用形態による区別を設ける場合は、職務内容、責任の程度、配置転換の範囲などの違いを明確にし、それに基づく合理的な理由を説明できるようにしておくことが重要です。
4. 賞与をもらえなかった場合の対処法


就業規則・賞与規定の確認方法
賞与をもらえなかった場合、まず就業規則や賞与規定の内容を確認することが重要です。
就業規則は常時各作業場の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付、電子データでの提供などの方法で周知することが義務付けられています。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 賞与支給の有無と支給時期
- 支給対象者の範囲
- 支給額の算定方法
- 支給条件(在籍要件など)
- 不支給となる事由
もし就業規則に「賞与を支給する」と明記されているにもかかわらず支給されていない場合は、会社が労働契約上の義務を果たしていない可能性があります。
また、雇用契約書や労働条件通知書も併せて確認しましょう。
会社への問い合わせと説明の求め方
就業規則を確認した後、賞与が支給されなかった理由を会社に問い合わせることが次のステップです。
問い合わせる際のポイントは以下の通りです。
感情的にならず、冷静に事実確認をする姿勢が重要です。
「今回の賞与が支給されなかった理由を教えていただけますか」と丁寧に尋ねます。
会社側の説明を聞き、就業規則や賞与規定との整合性を確認します。
説明が不十分だと感じた場合は、「就業規則の○条には○○と記載されていますが、今回の取扱いとの関係を教えていただけますか」と具体的に質問します。
やり取りは記録として残しておくことが重要です。
メールでのやり取りであれば自動的に記録が残りますが、口頭での説明を受けた場合は、日時、場所、相手の氏名、説明内容をメモしておきましょう。
後々、労働基準監督署や弁護士に相談する際の重要な証拠となります。
労働基準監督署への相談
会社への問い合わせで解決しない場合、労働基準監督署に相談することができます。
労働基準監督署は、労働基準法などの労働関係法令の遵守を監督する行政機関です。
相談方法は以下の通りです。
- 管轄の労働基準監督署に電話または来所で相談
- 労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)への電話相談
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナーでの相談
相談時には以下の資料を準備しておくとスムーズです。
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 就業規則(賞与規定)のコピー
- 給与明細や賞与明細
- 会社とのやり取りの記録
労働基準監督署は、違法な労働条件について会社に是正勧告を行う権限を持っています。
ただし、労働基準監督署が対応できるのは労働基準法などの法令違反がある場合に限られます。
法令違反とまでは言えないが不当だと感じる場合は、後述する弁護士への相談も検討しましょう。
弁護士への相談や法的措置の検討
労働基準監督署でも解決しない場合、または高額の未払い賞与がある場合は、弁護士に相談して法的措置を検討することも選択肢です。
弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
- 法的な観点から自分の権利の有無を判断してもらえる
- 会社との交渉を代理してもらえる
- 必要に応じて労働審判や訴訟の手続きを依頼できる
- 未払い賞与だけでなく、慰謝料や遅延損害金の請求も検討できる
初回相談は無料または低額で受け付けている法律事務所も多くあります。
法テラス(日本司法支援センター)では、経済的に余裕のない方に対して無料の法律相談や弁護士費用の立替制度を提供しています。
法的措置としては以下のような方法があります。
- 内容証明郵便による請求
- 労働審判の申立て(原則3回以内の期日で迅速に解決)
- 民事訴訟の提起(時間はかかるが本格的な審理)
ただし、法的措置には時間と費用がかかるため、まずは社内での話し合いや労働基準監督署への相談を試みることをお勧めします。
まとめ
この記事の重要なポイントをまとめます。
- 賞与の支給は法律上の義務ではないが、就業規則に定めがあれば支給義務が生じる
- 性別・国籍・思想信条などによる差別的な賞与の不支給は明確に違法である
- 恣意的な理由ではなく、客観的で合理的な基準に基づく支給であれば適法となる
- 賞与規定を明確に定め、評価基準を透明化することがトラブル防止につながる
- 成果・能力・貢献度による差異は、適切に運用すれば認められる
- 雇用形態による区別は原則適法だが、同一労働同一賃金の観点から不合理な差は禁止
- 賞与が支給されない場合は、まず就業規則を確認し、会社に理由を問い合わせる
- 会社の説明に納得できない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談する
- やり取りの記録を残しておくことが、後々の対応に役立つ
- 法的措置には時間と費用がかかるため、まずは話し合いでの解決を目指すことが重要
賞与をめぐるトラブルは、お互いの認識のずれから生じることが多いものです。会社側は明確な基準を設けて透明性を確保し、従業員側は自分の権利と会社の規定を正しく理解することが、円滑な労使関係につながります。もし理不尽な扱いを受けていると感じたら、適切な手続きを踏んで自分の権利を主張することも大切です。この記事が、あなたの疑問や不安の解消に役立てば幸いです。
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