あなたは「賞与をもらうと扶養から外れてしまうから、受け取りを拒否したい」と悩んだことはありませんか?結論、賞与の受け取り拒否は法的に可能ですが、会社側の対応や後々のトラブルを考えると慎重な判断が必要です。この記事を読むことで賞与と扶養の正しい関係性、法的リスク、そして扶養から外れないための具体的な対処法がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.賞与受け取り拒否で扶養から外れないための基本知識

扶養の130万円の壁とは何か
社会保険上の扶養に入るためには、年収130万円未満であることが条件の一つとなっています。
この130万円には、給与だけでなく賞与(ボーナス)も含まれます。
年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れ、自分で国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。
扶養から外れると年間約20万円程度の社会保険料負担が発生するため、多くの方が130万円の壁を意識して働いています。
賞与が年収に含まれる理由
賞与は労働の対価として支払われる報酬であるため、社会保険上の年収に含まれます。
給与と同様に、賞与も継続的な収入と判断されるためです。
月々の給与で年収130万円以内に収まるよう調整していても、賞与を受け取ることで年収が130万円を超えてしまうケースがあります。
このため、扶養内で働きたい方にとって、賞与の支給は大きな問題となるのです。
賞与を受け取り拒否することは可能なのか
法律上、労働者が自由な意思で賞与の受け取りを辞退すること自体は可能です。
給与債権を放棄する意思表示をすれば、受け取り拒否は認められます。
ただし、会社側には賃金全額払いの原則があるため、会社側が支払いを拒否することはできません。
労働者側から辞退する場合でも、後々トラブルにならないよう書面での意思表示が望ましいとされています。
労働基準法における賃金全額払いの原則
労働基準法第24条には、賃金は全額を労働者に支払わなければならないという原則があります。
これは労働者の権利を守るための規定です。
会社側が一方的に賃金の支払いを拒否したり減額したりすることは、この原則に違反します。
ただし、労働者が自由な意思に基づいて賃金請求権を放棄する場合には、この原則に抵触しないと解釈されています。
2.賞与受け取り拒否の法的リスクと実務上の問題点

会社側が賞与支払いを拒否できない理由
会社には労働基準法に基づく賃金全額払いの義務があります。
労働者が働いた分については、必ず賃金を支払わなければなりません。
賞与についても、就業規則や賞与規程で支給すると定められている場合、会社は支払う義務があります。
労働者から辞退の申し出があっても、会社としては「支払わなくてよい」と安易に判断できない状況にあるのです。
労働者が賞与を辞退する場合の法的解釈
労働者が賞与を辞退する場合、「自由な意思に基づく給与債権の放棄」と解釈されます。
過去の判例(シンガーソーイングメシーン事件)では、一度受け取りを拒否した労働者が後から「誤りがあった」として支払いを求めたケースがあります。
このため、辞退する場合は明確な意思表示と合理的な理由が必要とされています。
扶養から外れるために賞与を辞退したいという理由が「合理的」と認められるかどうかは、判断が分かれるところです。
給与債権の放棄に必要な条件
給与債権を放棄するには、本人の自由な意思による決定であることが前提です。
会社からの強要や不当な圧力があってはなりません。
また、放棄の意思を明確に示す書面を作成することが推奨されます。
書面には、賞与を受け取らない旨、その理由、そして後日請求しない旨を記載するとよいでしょう。
後から賞与未払いを主張されるリスク
会社側が最も懸念するのは、後日「賞与を受け取っていない」と主張されるリスクです。
口頭での辞退だけでは、後々「実は受け取りたかったのに会社が払ってくれなかった」と主張される可能性があります。
このようなトラブルを避けるため、多くの専門家は「労働者が辞退を申し出ても、会社は通常通り支払うべき」と助言しています。
会社としては、支払いを実行した上で労働者が受け取らない選択をするという形が最も安全なのです。
3.扶養から外れないための正しい対処法

年収130万円を超えないための勤務調整方法
最も確実な方法は、賞与支給前に勤務日数や時間を調整することです。
年収が130万円を超えないよう、事前に年間の収入見込みを計算しておきましょう。
月々の給与と賞与の合計が130万円未満になるよう、10月頃から勤務調整を始めるのが一般的です。
会社の担当者に相談し、シフトを減らすなどの対応を取ることができます。
一時的な収入増加で扶養認定が継続できるケース
2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」が導入されました。
この制度により、繁忙期の残業などで一時的に年収130万円を超えた場合でも、事業主の証明があれば引き続き扶養認定が可能になりました。
ただし、この特例が適用されるのは最大2年間です。
また、扶養認定の最終判断は加入している健康保険組合が行うため、事前に確認が必要です。
年収の壁・支援強化パッケージの活用方法
この制度を利用するには、事業主が「一時的な収入増加である」ことを証明する書類を作成します。
労働者は、その書類を配偶者の勤務先または健康保険組合に提出します。
証明内容としては、繁忙期対応や人手不足による残業増加などが該当します。
計画的に収入を増やすのではなく、やむを得ない事情による一時的な増加であることがポイントです。
月収108,333円を超える期間の目安と判定基準
年収130万円を月収に換算すると、月額108,333円が一つの目安となります。
1ヶ月だけこの金額を超えても、すぐに扶養から外れることはありません。
一般的には、3ヶ月連続で108,333円を超えた場合や、3ヶ月平均が108,333円を超えた場合に扶養から外れる可能性があります。
ただし、この判定基準は加入している健康保険組合によって異なるため、必ず事前に確認してください。
賞与支給前に退職するという選択肢
賞与の支給日在籍要件がある会社の場合、賞与支給日前に退職すれば賞与は支給されません。
これにより年収130万円を超えることを避けられます。
ただし、退職するという判断は慎重に行う必要があります。
次の仕事が決まっているか、退職による生活への影響はどうかなど、総合的に考えましょう。
4.賞与と扶養に関するよくある誤解と正しい知識

扶養判定は年間合計ではなく継続性で判断される
多くの方が誤解しているのが、「1月から12月までの合計収入が130万円未満なら大丈夫」という考え方です。
実際には、扶養の判定は「今後継続して年収130万円以上の収入が見込まれるか」で判断されます。
つまり、現在の収入状況を年収に換算して判定するのです。
過去の収入が少なくても、現在の月収が高ければ扶養から外れる可能性があるということです。
通勤手当や残業代も130万円に含まれるのか
社会保険上の年収130万円には、通勤手当や残業代も含まれます。
基本給だけでなく、各種手当や賞与など、すべての労働対価が対象です。
ただし、税制上の扶養(103万円の壁)では通勤手当は含まれないため、混同しないよう注意が必要です。
社会保険と税制では計算方法が異なるという点を理解しておきましょう。
扶養から外れた場合の社会保険料の負担額
扶養から外れて国民健康保険と国民年金に加入する場合、年間約20万円前後の保険料負担が発生します。
例えば年収130万円の場合、国民年金保険料が年間約20万円、国民健康保険料が年収に応じて数万円となります。
勤務先の社会保険に加入できる場合は、保険料は会社と折半となるため負担は軽減されます。
年収130万円で扶養から外れると、手取りが年収129万円の時より少なくなる逆転現象が起こるのです。
配偶者の家族手当が不支給になる可能性
扶養から外れることで、配偶者の勤務先から支給されている家族手当が不支給になる場合があります。
家族手当が月2万円の場合、年間24万円の収入減となります。
これは大きな損失です。
配偶者の勤務先の家族手当の支給条件を必ず確認し、扶養を外れた場合の影響を計算しておきましょう。
扶養を外れても損しない年収の目安
扶養から外れて社会保険料を負担しても、年収が約153万円〜160万円以上になれば手取りは増加し始めます。
中途半端に130万円を少し超える程度では、かえって手取りが減ってしまいます。
扶養を外れる場合は、しっかり働いて年収160万円以上を目指すのが得策です。
将来の年金受給額が増える、傷病手当金や出産手当金が受けられるなどのメリットもあるため、長期的な視点で判断しましょう。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 賞与は社会保険上の年収130万円に含まれるため、受け取ると扶養から外れる可能性がある
- 賞与の受け取り拒否は法的に可能だが、会社側には支払い義務があり後々のトラブルリスクがある
- 労働基準法の賃金全額払いの原則により、会社は賞与を支払わなければならない
- 扶養から外れないためには、事前の勤務調整や賞与支給前の退職などの方法がある
- 2023年10月から一時的な収入増加で扶養認定が継続できる制度が開始された
- 扶養判定は年間合計ではなく、継続的な収入見込みで判断される
- 月収108,333円を3ヶ月連続で超えると扶養から外れる可能性が高い
- 通勤手当や残業代も社会保険上の年収に含まれる
- 扶養から外れると年間約20万円の社会保険料負担が発生する
- 扶養を外れても損しないためには年収160万円以上を目指すべき
賞与と扶養の問題は、一時的な収入だけでなく、将来のライフプランにも関わる重要な判断です。
ご自身の状況をよく見極め、必要であれば社会保険労務士や会社の担当者に相談しながら、最適な働き方を選択していきましょう。
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