あなたは「賞与をもらってから退職したいけど、タイミングが分からない」と悩んだことはありませんか?
結論、賞与を受け取ってから退職することは可能ですが、就業規則の確認と適切なタイミングでの伝え方が重要です。
この記事を読むことで賞与と退職の関係、円満退職のための具体的な方法、注意すべきポイントがわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
1.賞与辞める前に知っておくべき基礎知識

賞与(ボーナス)とは何か
賞与(ボーナス)とは、月々の給与とは別に支給される賃金のことです。
一般的には夏季と冬季の年2回、6月下旬から7月中旬、12月上旬から12月中旬に支給されることが多くなっています。
企業によっては年3回や4回支給するケースもあれば、業績に応じた決算賞与を支給する会社もあります。
賞与は従業員のモチベーション向上や、過去の貢献・成果への報酬、将来への期待値という3つの意味合いを持っています。
支給額は企業の業績や個人の評価、勤務成績などによって決定されるのが一般的です。
賞与に関する法律上の取り扱い
賞与の支給について、労働基準法では明確な定めがありません。
労働基準法第11条では賞与を「賃金の一部」として位置づけているだけで、支給義務については規定していないのです。
そのため、賞与を支給するかどうか、いくら支給するか、いつ支給するかは企業の裁量に委ねられています。
ただし、就業規則や労働契約で賞与支給について明記されている場合は、その規定に従って支給する義務が発生します。
つまり、賞与は法律で保障された権利ではなく、会社と従業員の合意によって初めて具体的な請求権が発生するものなのです。
就業規則で確認すべき重要なポイント
賞与を受け取って退職を検討している方は、必ず自社の就業規則を確認しましょう。
就業規則で確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 支給対象時期:賞与の算定期間がいつからいつまでか
- 賞与の算定基準・査定期間:どのような基準で金額が決まるか
- ボーナス支給日:具体的な支給日はいつか
- 支給日在籍要件の有無:支給日に在籍していることが条件かどうか
- 退職予定者への減額規定:退職予定者の賞与が減額されるかどうか
特に支給日在籍要件の有無は、退職のタイミングを決める上で最も重要な要素となります。
これらの情報は退職計画を立てる際の基礎資料となるため、早めに確認しておくことをおすすめします。
支給日在籍要件とは
支給日在籍要件とは、賞与支給日に会社に在籍している従業員にのみ賞与を支給するという規定のことです。
この要件が就業規則や賃金規程、賞与規程に明記されている場合、支給日より前に退職した従業員には賞与を支払う必要がありません。
例えば、7月10日が賞与支給日で支給日在籍要件がある場合、7月9日に退職していれば賞与は受け取れないということになります。
支給日在籍要件は予め就業規則等に定め、従業員に周知する必要があります。
一方、支給日在籍要件が定められていない場合は、算定期間に勤務していれば退職後でも賞与が支給される可能性があります。
自社に支給日在籍要件があるかどうかは、退職タイミングを決める上で最も重要な判断材料となるのです。
2.賞与支給前に退職するとどうなるのか

支給日前に退職した場合の賞与の扱い
賞与支給日前に退職した場合、基本的には賞与を受け取ることができません。
これは多くの企業で支給日在籍要件が設けられているためです。
例えば、賞与の算定期間(1月から6月)にフルで勤務していたとしても、7月10日の支給日前に退職してしまうと、賞与は支給されないケースがほとんどです。
ただし、就業規則に支給日在籍要件が明記されていない場合は例外があります。
この場合、算定期間の勤務実績に応じて賞与が支給される可能性があるため、会社側と交渉の余地があるでしょう。
また、年俸制などの契約形態によっては、賞与相当額が年俸に含まれているため、支払い義務が生じることもあります。
賞与の算定期間と支給対象者の関係
賞与の算定期間とは、賞与額を決定するために評価の対象となる期間のことです。
一般的には以下のような設定になっています。
| 支給時期 | 算定期間 |
|---|---|
| 夏季賞与(6月~7月) | 前年10月~当年3月 または 前年12月~当年5月 |
| 冬季賞与(12月) | 当年4月~9月 または 当年6月~11月 |
算定期間に在籍し、勤務実績があることが賞与支給の前提となります。
ただし、算定期間に勤務していても支給日在籍要件を満たさなければ、賞与は支給されません。
つまり、「算定期間の勤務」と「支給日の在籍」という2つの条件を同時に満たす必要があるということです。
算定期間中に長期休暇や休職があった場合は、その分が減額されることもあるため注意が必要です。
退職予定者への賞与減額のケース
退職予定者であっても支給日に在籍していれば賞与は支給されますが、減額される可能性があります。
賞与には「過去の貢献への報酬」と「将来への期待」という2つの性格があり、退職予定者には将来への期待部分が該当しないとみなされるためです。
就業規則や賃金規程に「退職予定者の賞与は〇割減額する」といった規定がある場合、その規定に従って減額されることになります。
過去の裁判例(ベネッセコーポレーション事件)では、退職予定者への82%もの大幅減額が争われ、将来の期待部分は20%程度が妥当と判断されました。
そのため、退職を理由に大幅な減額(50%以上など)が行われた場合は、不当な減額として争える可能性があります。
ただし、減額規定があらかじめ就業規則に明記され、従業員に周知されている場合は、一定の減額は認められることを理解しておきましょう。
賞与が支給されないケースと例外
賞与が支給されない主なケースは以下の通りです。
- 就業規則に「賞与を支給する場合がある」といった曖昧な表記のみの場合
- 支給日在籍要件があり、支給日前に退職している場合
- 会社の業績が著しく悪化している場合
- 懲戒処分を受けている場合
- 算定期間の出勤日数が著しく少ない場合
一方、例外的に賞与が支給されるケースもあります。
支給日在籍要件が就業規則に明記されていない場合は、算定期間に勤務していれば退職後でも賞与が支給される可能性があります。
また、労働契約で賞与額が明確に定められている場合や、年俸制で賞与相当額が含まれている場合は、支払い義務が発生します。
支給日在籍要件の有無が最も重要な判断基準となるため、退職前に必ず確認することが大切です。
3.賞与を満額受け取って円満退職する方法

賞与支給後に退職を伝えるベストタイミング
賞与を満額受け取って円満退職するためには、賞与が自分の口座に振り込まれたことを確認してから退職を伝えましょう。
賞与支給日に在籍していても、振込前に退職の意思を伝えると減額や支給停止になる可能性があります。
ただし、賞与支給直後に退職を申し出ると「賞与目的で退職を遅らせた」と思われるリスクがあります。
円満退職を目指すなら、賞与受給後1~2週間程度の間隔を空けてから退職を伝えるのが無難です。
具体的なタイミングの例は以下の通りです。
- 7月10日に賞与支給→7月下旬に退職の意思を伝える→9月末退職
- 12月10日に賞与支給→12月下旬または1月上旬に退職の意思を伝える→2月末退職
このスケジュールなら、賞与支給と退職の時期に十分な間隔があり、周囲からの印象も悪くなりません。
引き継ぎスケジュールの立て方
円満退職のためには、余裕を持った引き継ぎスケジュールを立てることが重要です。
引き継ぎスケジュールは以下の手順で立てましょう。
- 退職希望日から逆算する:最終出社日を決め、そこから必要な期間を計算する
- 引き継ぎ内容をリストアップする:担当業務、取引先情報、進行中の案件などを洗い出す
- 引き継ぎ資料を作成する:業務マニュアルや手順書を用意する
- 後任者への指導期間を確保する:実際の業務を一緒に行いながら教える時間を設ける
- 取引先への挨拶を計画する:後任者とともに訪問する日程を調整する
最低でも1ヶ月、複雑な業務の場合は2~3ヶ月の引き継ぎ期間を見込みましょう。
引き継ぎは「立つ鳥跡を濁さず」の精神で丁寧に行うことで、職場との良好な関係を保ったまま退職できます。
余裕を持ったスケジュールを組み、後任に迷惑をかけないよう心がける姿勢が円満退職への鍵となります。
円満退職のための退職理由の伝え方
円満退職を実現するには、退職理由の伝え方が非常に重要です。
退職理由を伝える際のポイントは以下の通りです。
- 感謝の気持ちから始める:「これまで大変お世話になりました」と感謝を述べる
- 前向きな理由を伝える:「新しい分野に挑戦したい」など、ポジティブな表現を使う
- 会社や同僚の批判をしない:不満があっても口外しない
- 退職の意思が固いことを伝える:曖昧な表現は避け、決意を明確に示す
- 現職では実現困難なことを説明する:なぜ退職が必要なのかを論理的に説明する
退職理由の伝え方の例文は以下の通りです。
「これまで〇〇の分野で多くのことを学ばせていただき、大変感謝しております。この経験を活かして、今後は△△の領域でスキルを磨きたいと考えるようになりました。現在の職場では実現が難しいため、このタイミングで新しい環境に挑戦したいと考え、退職を決意いたしました」
本音がネガティブな理由であっても、それをポジティブに言い換えることが重要です。
誠意を持って丁寧に伝えることで、上司も退職を受け入れやすくなります。
周囲に配慮した退職の進め方
円満退職のためには、周囲への配慮を忘れない退職の進め方が大切です。
退職の進め方の基本的な流れは以下の通りです。
- 直属の上司に口頭で伝える:まず最初に直属の上司に相談する
- 退職日を上司と相談して決める:一方的に決めず、会社の都合も考慮する
- 退職願を提出する:口頭での合意後、正式に書面で提出する
- 同僚や他部署に伝える:上司から発表があった後に周知する
- 取引先に挨拶する:後任者が決まってから、後任と一緒に挨拶に行く
退職の意思が固まるまでは、同僚や他部署に口外しないことが重要です。
情報が漏れると職場に混乱を招き、円満退職が難しくなる可能性があります。
また、賞与支給後は特に慎重に行動し、賞与をもらうために退職を遅らせたと思われないよう配慮しましょう。
これまでお世話になった会社と同僚への感謝の気持ちを忘れず、最後まで責任を持って業務を遂行する姿勢が大切です。
4.賞与と退職時期に関する注意点

賞与目的の退職と思われないためのポイント
賞与を受け取ってから退職すること自体は問題ありませんが、周囲の印象に配慮する必要があります。
賞与目的と思われないためのポイントは以下の通りです。
- 賞与支給後すぐではなく、1~2週間以上空けてから退職を伝える
- 引き継ぎを丁寧に行い、責任を持って業務を完了させる
- 感謝の気持ちを言葉と行動で示す
- 退職理由を前向きな内容で説明する
- 有給休暇の取得も会社と相談しながら計画的に進める
特に重要なのは、「ボーナスをもらってから辞める」という印象を与えないことです。
そのためには、賞与支給日と退職申し出のタイミングに適切な間隔を設けることが効果的です。
また、十分な引き継ぎ期間を設けることで、「最後まで責任を持って仕事をした」という印象を残すことができます。
人と人のつながりはどこで続くか分からないため、良好な関係を保ったまま退職することが将来的にも重要です。
退職届を提出する適切な時期
退職届を提出する適切な時期は、退職希望日の1~2ヶ月前が理想的です。
法律上は退職希望日の2週間前に伝えれば退職できますが、これは最低限の期間であり、円満退職には不十分です。
退職届を提出するタイミングは以下の要素を考慮して決めましょう。
- 会社の就業規則の規定:「退職の〇ヶ月前までに申し出ること」と定められている場合は、それに従う
- 引き継ぎに必要な期間:業務の複雑さや引き継ぎ内容に応じて1~3ヶ月を見込む
- 繁忙期を避ける:可能であれば繁忙期は避け、業務が落ち着いている時期を選ぶ
- 賞与支給後の適切な間隔:賞与支給日から1~2週間以上空ける
賞与を受け取って円満退職したい場合の具体例は以下の通りです。
7月10日に夏季賞与支給→7月下旬に退職の意思表明→8月上旬に退職届提出→9月末退職
このスケジュールなら、賞与受給と退職申し出に適切な間隔があり、引き継ぎにも十分な時間を確保できます。
有給休暇と賞与支給日の関係
有給休暇中も会社に在籍しているため、支給日在籍要件を満たせば賞与の支給対象となります。
例えば、7月10日が賞与支給日で、7月1日から有給休暇を消化して7月31日が最終出社日の場合、賞与は支給されます。
ただし、退職が確定している場合は、金額が減額される可能性があることに注意が必要です。
有給休暇の取得は労働者の権利ですが、円満退職のためには以下のポイントに配慮しましょう。
- 上司と相談して有給取得のスケジュールを決める
- 引き継ぎが完了してから有給を消化する
- 業務に支障が出ないタイミングで取得する
- 取引先への挨拶など重要な業務は有給前に完了させる
有給休暇の消化と賞与受給の両方を実現するには、綿密なスケジュール管理が重要です。
退職希望日から逆算して、引き継ぎ期間、有給消化期間、賞与支給日を考慮した計画を立てましょう。
転職先への入社時期の調整方法
転職先への入社時期は、現職の退職手続きと調整しながら決める必要があります。
入社時期を調整する際のポイントは以下の通りです。
- 現職の退職日が確定してから入社日を決める
- 転職先には「現職の引き継ぎがあるため〇月頃の入社を希望」と伝える
- 賞与支給を待つために入社を遅らせることは避ける
- 転職先の繁忙期や研修スケジュールも考慮する
転職先の面接では、「賞与支給まで入社を待ってほしい」と直接伝えるのは印象が悪くなるため避けるべきです。
代わりに「引き継ぎに〇ヶ月必要なため、〇月頃の入社を希望します」といった説明をしましょう。
理想的なスケジュールの例は以下の通りです。
4月:転職活動開始→5月:内定獲得、8月入社で調整→7月10日:現職で賞与受給→7月下旬:退職の意思表明→7月末:退職、引き継ぎ→8月:転職先へ入社
このように、賞与受給と転職を両立させるには、早めの転職活動開始と綿密なスケジュール管理が不可欠です。
ただし、心身の不調で退職する場合は、賞与よりも健康を優先することが大切です。
まとめ
賞与を受け取ってから退職するための重要なポイントをまとめます。
- 賞与は法律で定められておらず、就業規則によって支給条件が異なる
- 支給日在籍要件の有無が退職タイミングを決める最重要ポイント
- 支給日前に退職すると原則として賞与は受け取れない
- 退職予定者でも支給日に在籍していれば賞与は支給されるが減額の可能性がある
- 賞与を満額受け取るには、振込確認後に退職を伝えることが重要
- 円満退職のためには賞与支給後1~2週間空けてから退職を申し出る
- 引き継ぎスケジュールは余裕を持って1~2ヶ月以上確保する
- 退職理由は感謝の気持ちと前向きな内容で伝える
- 有給休暇中も在籍扱いのため支給日在籍要件を満たせば賞与は支給される
- 転職先への入社時期は現職の退職手続きを考慮して調整する
賞与を受け取って退職することは決して悪いことではありませんが、円満退職のためには周囲への配慮と適切なタイミングが重要です。
就業規則をしっかり確認し、計画的に退職準備を進めることで、賞与を受け取りながら良好な関係を保ったまま新しいキャリアに進むことができます。
あなたの退職がスムーズに進み、次のステージで活躍できることを応援しています。
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