あなたは「なぜ自分だけ賞与が支給されないのか」と悩んでいませんか?結論、賞与が一人だけ支給されないケースには合法的な理由と違法な理由の両方が存在します。この記事を読むことで、賞与不支給の理由、違法性の判断基準、具体的な対処法がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.賞与が一人だけ支給されない主な理由

人事評価や勤務成績による不支給
賞与の支給は人事評価や勤務成績と密接に関係しています。
多くの企業では、賞与の支給額や支給の有無を従業員の業績評価に基づいて決定しています。
目標達成率が著しく低い場合や、業務上の重大なミスが複数回あった場合、顧客からのクレームが多い場合などは、賞与が減額されたり支給されなかったりすることがあります。
また、評価期間中の欠勤や遅刻が多い場合も、勤務態度の評価が低くなり賞与に影響します。
ただし、評価基準が明確でない場合や、評価が主観的すぎる場合は問題となる可能性があります。
勤務期間や在籍要件を満たしていない場合
賞与の支給には、一定期間の勤務実績が求められることが一般的です。
就業規則で「賞与支給日に在籍していること」「算定期間の○%以上出勤していること」などの条件が定められているケースが多くあります。
具体的には以下のような状況で不支給となることがあります。
- 入社したばかりで賞与算定期間に在籍していなかった
- 賞与支給日前に退職の意思表示をした
- 算定期間中の欠勤日数が規定を超えていた
- 休職期間が長く、出勤日数の要件を満たせなかった
これらの要件は就業規則に明記されている必要があり、事前に従業員に周知されていなければなりません。
懲戒処分や就業規則違反があった場合
懲戒処分を受けた従業員に対して、賞与を不支給または減額することは一般的に認められています。
重大な就業規則違反や懲戒事由があった場合、賞与が支給されないことがあります。
具体的な事例としては、業務上の横領や不正行為、重大な情報漏洩、無断欠勤の繰り返し、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為などが挙げられます。
ただし、懲戒処分には適正な手続きが必要であり、処分の内容と賞与不支給の関連性が合理的である必要があります。
軽微な違反で賞与を全額不支給とするのは、処分として重すぎると判断される可能性があります。
雇用形態や契約内容による違い
正社員と非正規社員では、賞与の支給条件が異なることがあります。
雇用契約書や就業規則で、正社員には賞与を支給するが、契約社員やパート社員には支給しないと定められているケースは少なくありません。
しかし、同一労働同一賃金の原則により、正規・非正規間の不合理な待遇差は違法とされています。
業務内容や責任の程度が正社員と同等であるにもかかわらず、雇用形態だけを理由に賞与を支給しないことは、不合理な待遇差として問題視される可能性があります。
また、試用期間中の社員に対して賞与を支給しない規定がある企業もありますが、これも就業規則に明記されている必要があります。
2.賞与の一人だけ不支給は違法になるのか

賞与の法的な位置づけと支給義務
賞与(ボーナス)は法律上、必ず支払わなければならない賃金ではありません。
労働基準法では、賞与は「定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるもの」と定義されており、通常の賃金とは区別されています。
そのため、会社は就業規則や賃金規程で賞与の支給条件を自由に定めることができます。
ただし、就業規則で「賞与を支給する」と定めている場合は、その規定に従う義務が生じます。
また、賞与を支給しない、または一部の従業員だけに支給しない場合でも、その理由が合理的であり、就業規則に基づいている必要があります。
違法と判断されるケースの具体例
賞与の一人だけ不支給が違法と判断されるケースがあります。
以下のような理由での不支給は、違法性が高いと考えられます。
- 性別、国籍、信条などを理由とした差別的な不支給
- 労働組合活動を理由とした不利益取扱い
- 育児休業や介護休業を取得したことへの報復的な不支給
- 正当な権利行使(有給休暇取得など)への制裁としての不支給
- 合理的な理由がない恣意的な不支給
また、就業規則に定められた支給要件を満たしているにもかかわらず、正当な理由なく特定の個人だけ支給しない場合も違法となります。
パワハラやいじめの一環として賞与を支給しないケースも、違法行為として認められる可能性があります。
合法的に一人だけ不支給となる条件
合法的に賞与を一人だけ不支給とできるのは、客観的で合理的な理由がある場合です。
就業規則や賞与規程に明記された支給要件を満たしていないことが明確な場合は、合法的に不支給とすることができます。
| 合法的な不支給理由 | 具体例 |
|---|---|
| 人事評価基準未達 | 明確な評価基準に基づき著しく低評価 |
| 在籍要件不足 | 算定期間の出勤率が規定未満 |
| 懲戒処分 | 適正な手続きを経た懲戒処分の対象 |
| 契約上の定め | 雇用契約で賞与対象外と明記 |
これらの理由が認められるには、就業規則への明記、基準の明確性と客観性、事前の周知、適正な手続きといった要件を満たす必要があります。
不当な差別と認められる場合
賞与の不支給が不当な差別と認められるケースがあります。
労働基準法第3条では、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする差別的取扱いを禁止しています。
また、男女雇用機会均等法では性別による差別を、育児介護休業法では育児・介護休業の取得を理由とした不利益取扱いを禁止しています。
さらに、労働組合法では労働組合活動を理由とした不利益取扱いを不当労働行為として禁じています。
これらの法律に違反する理由で賞与を一人だけ支給しない場合、違法な差別として損害賠償請求の対象となる可能性があります。
3.賞与が支給されない理由を確認する方法

就業規則や賞与規程の確認ポイント
まず確認すべきは、会社の就業規則や賞与規程です。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられており、従業員がいつでも閲覧できるようにしなければなりません。
就業規則で確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 賞与の支給対象者(正社員のみ、全従業員など)
- 支給時期と回数(年2回、夏冬など)
- 算定期間と支給要件(在籍期間、出勤率など)
- 支給額の決定方法(基本給の○ヶ月分、業績による変動など)
- 不支給となる条件(懲戒処分、評価基準未達など)
これらの規定と自分の状況を照らし合わせることで、不支給の理由が明確になることがあります。
上司や人事部門への適切な質問方法
就業規則を確認しても不支給の理由がわからない場合は、上司や人事部門に直接確認することが重要です。
質問する際は、感情的にならず、冷静かつ建設的な姿勢で臨むことが大切です。
効果的な質問の仕方としては、「今回の賞与について、私が支給対象とならなかった理由を教えていただけますか」と丁寧に尋ねることから始めます。
その際、「今後の改善に活かしたい」「自分の課題を理解したい」といった前向きな姿勢を示すと、相手も説明しやすくなります。
また、口頭だけでなく、可能であれば書面での回答を求めることで、後々の証拠としても活用できます。
質問の際は、日時、場所、対応者、説明内容をメモに残しておくことをおすすめします。
賞与支給基準の開示請求について
会社には、賞与の支給基準を明確に示す義務があります。
賃金や賞与に関する情報は、労働条件の重要な要素であり、従業員には知る権利があります。
賞与支給基準が不明確な場合や、開示されていない場合は、人事部門に対して開示を請求することができます。
開示請求は書面で行い、「賞与支給基準の開示請求書」として日付と署名を明記し、控えを保管しておくとよいでしょう。
会社が正当な理由なく開示を拒否する場合は、労働基準監督署に相談することも検討できます。
ただし、他の従業員の個人的な評価情報や給与額など、個人情報に関わる部分については、開示されないこともあります。
4.賞与が一人だけ支給されない時の対処法

社内で解決を図る際の手順と注意点
まずは社内での解決を試みることが基本です。
感情的にならず、冷静に事実関係を整理し、就業規則や賞与規程に基づいて自分の主張を組み立てることが重要です。
社内で解決を図る際の手順は以下の通りです。
- 就業規則と賞与規程を確認し、支給要件を把握する
- 直属の上司に不支給の理由を丁寧に質問する
- 上司の説明に納得できない場合は人事部門に相談する
- 必要に応じて社内の相談窓口やコンプライアンス部門を利用する
- すべてのやり取りを記録として残す
注意点としては、SNSや社内で不満を拡散させないこと、同僚を巻き込んで問題を大きくしないこと、証拠となる文書やメールは必ず保管することが挙げられます。
労働基準監督署への相談方法
社内での解決が難しい場合は、労働基準監督署への相談を検討します。
労働基準監督署は、労働基準法違反の事案を取り扱う行政機関です。
相談は無料で、予約なしでも対応してもらえますが、混雑していることが多いため、事前に電話予約をすることをおすすめします。
相談に行く際には、以下の資料を持参すると効果的です。
- 雇用契約書のコピー
- 就業規則や賞与規程のコピー
- 給与明細(過去の賞与支給実績がわかるもの)
- 会社とのやり取りの記録(メール、メモなど)
- 賞与不支給の通知書(あれば)
労働基準監督署は、法律違反が認められる場合には会社に対して是正勧告を行うことができます。
ただし、賞与は法律上の必須事項ではないため、就業規則違反や明らかな差別がない限り、監督署が介入できないケースもあります。
弁護士や労働組合に相談すべきケース
以下のような場合は、弁護士や労働組合への相談を検討すべきです。
- 明らかな差別やハラスメントによる不支給
- 就業規則違反が明白だが会社が対応しない
- 労働基準監督署の相談でも解決しなかった
- 金額が大きく、法的措置を検討したい
- 不当解雇など他の問題も併せて発生している
弁護士に相談する場合、労働問題に精通した弁護士を選ぶことが重要です。
初回相談は30分5,000円程度が一般的ですが、法テラスを利用すれば無料相談も可能です。
労働組合に加入している場合は、組合を通じて団体交渉を申し入れることもできます。
個人でも加入できる労働組合(ユニオン)もあり、賞与の不支給問題について交渉を代行してもらえます。
証拠収集と記録保存の重要性
問題解決のためには、証拠の収集と記録の保存が極めて重要です。
どのような手段で解決を図る場合でも、客観的な証拠がなければ自分の主張を証明することができません。
保存すべき証拠としては、雇用契約書、就業規則・賞与規程、過去の給与明細と賞与明細、人事評価書、会社とのやり取り(メール、書面、録音など)、同僚の証言(可能であれば)などがあります。
特に、上司や人事担当者との面談内容は、日時、場所、出席者、話された内容を詳細にメモとして残すことが大切です。
可能であれば、重要な面談は録音しておくことも検討してください(ただし、隠し録りは証拠能力に影響する場合があります)。
メールでのやり取りは、削除されないよう必ず保存し、可能であれば印刷しておくことをおすすめします。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 賞与が一人だけ支給されない理由には、人事評価の低さ、勤務期間の不足、懲戒処分、雇用形態の違いなどがある
- 賞与は法律上必須ではないが、就業規則で定められている場合は支給義務が生じる
- 性別や国籍などによる差別的な不支給、労働組合活動への報復的な不支給は違法となる
- まずは就業規則や賞与規程を確認し、支給要件を満たしているか確認する
- 不支給の理由がわからない場合は、上司や人事部門に冷静に質問する
- 社内で解決しない場合は、労働基準監督署、弁護士、労働組合への相談を検討する
- すべてのやり取りを記録し、証拠となる文書は必ず保存しておく
- 同一労働同一賃金の原則により、不合理な待遇差は違法となる可能性がある
賞与の不支給問題は、あなたの労働の対価に関わる重要な問題です。
諦めずに、適切な手段で解決を図ることが大切です。
必要に応じて専門家の力を借りながら、あなたの権利を守っていきましょう。
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