あなたは「被害を被るって言い方、なんか変かも」と思ったことはありませんか?
結論、「被害を被る」は二重表現(重言)にあたる言葉です。
この記事を読むことで正しい言い換え方や場面に応じた使い方がわかるようになりますよ。
ぜひ最後まで読んでください。
Contents
1.「被害を被る」は誤用?二重表現の意味と理由

「被害を被る」が二重表現と言われる理由
「被害を被る」が二重表現とされる理由は、「被害」という言葉の中に、すでに「被る」の意味が含まれているためです。
「被害」は「害を被ること」を意味する単語です。
そこに重ねて「被る」という動詞を使うことで、同じ意味を二回繰り返す形になってしまいます。
イメージとしては「頭痛が痛い」と似たような構造の表現だと考えると分かりやすいでしょう。
ただし、日常会話やニュースなどでは非常によく使われている表現でもあります。
「被害」と「被る」それぞれの意味を確認
それぞれの言葉の意味を確認すると、重複の理由がより明確になります。
- 被害:他者の行為や自然現象などによって、生命・身体・財産などに損害を受けること
- 被る(こうむる):身に受ける、自分の身に引き起こされる
つまり「被害」という単語そのものに「(害を)受ける」という意味がすでに含まれているのです。
そのため「被害を被る」は、構造上「害を受けることを受ける」というニュアンスになってしまいます。
二重表現(重言)とはどのような表現か
二重表現とは、同じ意味の言葉を重ねて使ってしまう表現のことを指し、「重言(じゅうげん)」とも呼ばれます。
代表的な例としては、次のようなものがあります。
- 頭痛が痛い
- 未だに未解決
- 最後の最後
- 過去の経験
- 必要不可欠
これらはいずれも、一方の言葉だけで意味が完結しているのに、もう一方の言葉が意味を重ねてしまっているパターンです。
「被害を被る」もこの重言の一種として、国語の解説やコラムなどでよく取り上げられています。
「被害を被る」は文法的に間違いなのか
文法的に完全な誤りとまでは言い切れないというのが実情です。
重言は意味が重複しているだけで、文法構造そのものが破綻しているわけではありません。
そのため「絶対に使ってはいけない表現」というよりは、「より洗練された言い回しがある」というレベルの指摘だと捉えるのが適切です。
実際、多くの新聞や公的な文書でも「被害を被る」という表現は使用されています。
ただし、文章の品質や読みやすさを重視する場面では、避けたほうが良いとされることが多いです。
辞書や国語の専門家による見解
国語辞典の多くは「被害」と「被る」をそれぞれ独立した見出し語として掲載しており、両者を組み合わせた「被害を被る」という形を誤用と明記しているわけではありません。
一方で、文章作法やビジネス文書の指南書などでは、重言の代表例として紹介されるケースが多いのが実態です。
専門家の間でも「気にしすぎる必要はない」という立場と、「公式文書では避けるべき」という立場の両方が存在しています。
つまり、絶対的な正解があるわけではなく、使う場面や相手によって判断するのが望ましい表現だと言えるでしょう。
2.「被害を被る」の正しい言い換え表現

「被害を受ける」への言い換え
最もシンプルで使いやすい言い換えが「被害を受ける」です。
「被害」という名詞に対して、意味が重複しない「受ける」という動詞を組み合わせる形になります。
ニュアンスもほぼ変わらず、フォーマルな文章からカジュアルな文章まで幅広く使えるのが特徴です。
例えば「台風により多くの家屋が被害を受けた」のように、自然な日本語として成立します。
迷ったときは、この「被害を受ける」を選んでおけば間違いないでしょう。
「損害を受ける」への言い換え
経済的・財産的なニュアンスを強めたい場合は「損害を受ける」という言い換えが適しています。
「損害」は主に金銭的・物質的な不利益を指す言葉で、ビジネスシーンや法律関連の文書との相性が良い表現です。
- 取引先のミスにより損害を受けた
- 事故によって車両に損害を受けた
このように、お金や物に関する被害を表現したい場合に特に有効です。
「危害を受ける」への言い換え
人の身体や生命に直接危険が及ぶケースでは「危害を受ける」という表現が使われることもあります。
「危害」は身体的な危険や暴力的な被害を指すニュアンスが強い言葉です。
そのため、犯罪や事件、トラブルなど、人への直接的な被害を説明する文章で多く見られます。
物的被害よりも、人的被害に重点を置きたい場合に選ぶとよいでしょう。
シーン別に使い分けたい言い換え表現
実際の文章作成では、シーンに応じて言い換えを選ぶことが大切です。
以下の表に、場面ごとのおすすめ表現をまとめました。
| シーン | おすすめの言い換え | 特徴 |
|---|---|---|
| 自然災害 | 被害を受ける | 最も汎用性が高い |
| ビジネス・契約 | 損害を受ける/損害を被る | 金銭的な意味合いが強い |
| 犯罪・事件 | 危害を受ける | 人的被害を強調できる |
| カジュアルな会話 | 被害を受ける/被害にあう | 自然で口語的 |
このように、文章のトーンや内容に応じて表現を選ぶことで、より伝わりやすい文章になります。
なお、「損害を被る」については重言ではなく自然な表現として広く使われているため、安心して使用できます。
3.「被害を被る」の使い方と例文

ビジネス文書での使用例
ビジネス文書では、正確さと簡潔さが求められるため、できるだけ重言を避けた表現が好まれます。
そのため「被害を被る」よりも「被害を受ける」「損害を受ける」への言い換えが推奨されるケースが多いです。
- 弊社は今回のシステム障害により多大な損害を受けました。
- 取引先の不手際によって被害を受けた場合、補償をご請求いただけます。
報告書や契約書など、社外に提出する文書では特に意識しておきたいポイントです。
日常会話での使用例
日常会話においては「被害を被る」という表現を使っても、特に違和感を持たれることはほとんどありません。
口語表現として広く浸透しているためです。
- 「隣の家の工事の音で、ずっと被害を被っているんだよね」
- 「変なメールのせいで、ちょっとした被害を被ったよ」
カジュアルな場面では、言い換えを意識しすぎず自然に話すことを優先しても問題ありません。
ニュースや報道での使用例
ニュースや新聞記事では「被害を被る」という表現が比較的よく見られます。
これは、読者にとって意味が分かりやすく、誤解が生じにくいという実用的な理由が背景にあります。
- 「大雨により多くの住民が被害を被った」
- 「サイバー攻撃により企業が被害を被るケースが増加している」
このように、報道の現場では重言かどうかよりも「伝わりやすさ」が優先される傾向があります。
SNSやカジュアルな文章での使用例
SNSやブログなど、個人が発信するカジュアルな文章では、表現の正確さよりも気持ちが伝わることの方が重視されます。
- 「詐欺サイトに引っかかって被害を被った…みんなも気をつけて」
- 「台風で停電して、地味に被害を被ってる」
こうした場面では、重言を気にするよりも、自分の言葉で素直に状況を伝えることを優先しても良いでしょう。
4.実際に使われている「被害を被る」の実例

自然災害に関する報道での実例
地震や台風、大雨といった自然災害の報道では、「被害を被る」という表現が頻繁に使われます。
被災者の状況を端的に伝える際、馴染みのある言い回しとして定着しているためです。
- 「豪雨により広範囲の地域が浸水の被害を被った」
- 「強風で屋根が飛ばされるなど、各地で被害を被る事例が報告されている」
緊急性の高い報道では、表現の厳密さよりも分かりやすさが優先される傾向にあります。
企業の不祥事に関するニュースでの実例
企業の不正やシステム障害に関するニュースでも、「被害を被る」という表現はよく登場します。
利用者や取引先が受けた不利益を説明する際の定型的な言い回しとして使われています。
- 「情報漏えいにより、多数の顧客が被害を被った可能性がある」
- 「システムの不具合で、複数の取引先が被害を被る結果となった」
企業の公式発表では、より丁寧な「ご迷惑をおかけした」といった表現と併用されることも多いです。
個人のトラブル相談での実例
消費者トラブルや近隣トラブルの相談事例でも、「被害を被る」という表現は頻繁に使われています。
相談者自身の状況を説明する際、感情を込めて伝えやすい言葉だからです。
- 「悪質な訪問販売によって被害を被ったという相談が相次いでいる」
- 「近隣住民とのトラブルで精神的な被害を被ったと感じている」
このような相談文では、正確な日本語表現よりも、状況や心情を伝えることが重視されます。
裁判や法律関連の文書での実例
裁判の判決文や法律関連の解説記事においても、「被害を被る」という表現が使われることがあります。
法律分野では「損害を被る」という表現とともに、慣用的に定着している側面があります。
- 「原告は被告の行為により経済的な被害を被ったと主張している」
- 「過失により第三者が被害を被った場合の責任について」
法律文書では正確性が重視されるものの、長年使われてきた表現として許容されているケースが多く見られます。
まとめ
最後に、この記事の内容を振り返ります。
- 「被害を被る」は「被害」と「被る」の意味が重なる二重表現(重言)である
- 重言とは「頭痛が痛い」のように同じ意味の言葉を重ねてしまう表現のこと
- 文法的に完全な誤りとは言えず、絶対に使ってはいけない表現ではない
- 言い換えとしては「被害を受ける」が最も汎用性が高い
- ビジネスや契約関連では「損害を受ける」が適している
- 人的被害を強調したい場合は「危害を受ける」が使える
- ニュースやSNS、日常会話では「被害を被る」がそのまま使われることも多い
- 公式文書やビジネスシーンでは、言い換え表現を意識すると文章の印象が良くなる
- 自然災害・企業不祥事・個人トラブル・裁判文書など、さまざまな場面で実際に使われている表現である
- 場面に応じて表現を選び分けることが、伝わりやすい文章を書くための第一歩になる
「被害を被る」という表現について、正しく理解できたのではないでしょうか。
普段の言葉選びを少し意識するだけで、文章はより伝わりやすく、信頼感のあるものになります。
ぜひ今回学んだ言い換え表現を、日々の文章作成に活かしてみてください。
関連サイト:文化庁 国語に関する施策
